育メンパパの秘密道具

入学前の子供と一緒に遊べる秘密の遊び道具を、小説形式で紹介します

【第1話】ソフトサッカーボール

今日も我が家は騒がしい朝を迎えていた。
一階から聞こえる喧騒に起こされ、深いため息をついて時計を眺め見る。時計の針は8時近くを指していた。

寝ぼけながら階段を降りてリビングに顔を出した瞬間、
「パパー! 早く遊ぼう!」
と言って走りながら抱きついてくるイノシシ、否、うちの長男の『ハル』。キラキラを輝く瞳の奥に、今日はどんなことをして遊ぼうかと期待が込められている。

その後ろからノロノロと後をつけてきて、
「パパー。ハルがねぇ、ボクの背中叩いたんだよー!」
と不服そう顔つきで、ハルを叱ってくれアピールを身体中で表現しているちびっ子が、次男『トモ』。ハルに対して「叩いちゃだめなんだよー!」、と注意を数回投げかけているが、長男には完全に無視されている。

二人に対して、頭をポンポンと触れて無言で応答し、そのまま食卓に向かうと、既に朝ごはんが用意されていた。
スマートフォンの通知ランプが点灯していたので、画面ロックを解除する。ママからのメッセージが届いていた。

『今日は朝からアポが入ったので午前中は仕事に行ってきまーす。お昼には戻るから、それまで子どもたちをヨロシクね』
メッセージの後には、うさぎのキャラクターがすたたたっと駆け出すスタンプが付け足されている。

子どもたちをヨロシク、というのは、つまり子供たちの面倒を見ていてね、と言うことだ。
「パーパ! 早く遊ぼうよー」
ハルの要求は全くブレない。発言は一貫しているものの、落ち着きがなく、先程から部屋の周りをグルグル走り回っている。

今日は外で遊ばせるか、と思ってカーテンを開ける。目に入ったのは生憎の雨模様。
部屋の中で遊ばせるしかないか。

顔を洗って着替えを済ませた後、朝ごはんを食べるために食卓の椅子に腰掛けた。
はてさて、今日は何をして遊んであげようか。
改めて子供たちを眺め見ると、ハルは相変わらず走り回り、トモはハルの後ろを追いかけている。
追いかけっこをしているようだ。朝からスタミナが溢れているようだが、外で遊ぶことができない。

何かよい遊び道具はないか、朝食のパンをかじりながら部屋を見渡していると、あるものが目に入った。
今日はアレで遊ばせるか。

部屋が散らかっていたため、子どもたちにおもちゃの片付けを指示した。最初は不服そうな表情を見せていたが、部屋で一緒に遊ぶ事を伝えると、追いかけっこを止めて二人で片付けを始めた。

家のリビングは14畳ほどの大きさで、細長い作りとなっている。テレビとソファがそれぞれ長い方の面に対面に設置されている。キッチンに面する短い方の壁近くにダイニングテーブルを配置している。

朝食を食べ終わった、ダイニングテーブルを長い面の方へ寄せた。すると、リビングの端から端まで10メートル近い長さを確保出来る。今日のプレイフィールドだ。

子どもたちの片付けを一通り確認し、部屋の片隅にあったボールを手にした。サッカーボールだ。黄色と黒でカラーリングされた、室内でも屋外でも使える柔らかサッカーボールである。

「このソフトサッカーボールを使ってゲームをしよう」
ルールは簡単だ。
部屋の端っこにゴール代わりの印を置いて、そこにゴールを決めたらポイントゲット。
先に10ポイント取ったほうが勝ちである。
さらには真ん中の線を越えてはならないというルールも追加した。子供は自分のペースでボールを蹴りたいのでパパは邪魔せず、ゴールを守るのみである。

パパ対子供二人のキックオフがリビングで始まった。

ハルの強烈なキックをなんとか跳ね返すものの、スピードのあるシュートで何点か決められてしまう。たまにハルがトモにボール渡してあげて蹴らせてあげる、ちょっとお兄ちゃんぽい一面を見せていた。

ちなみに5歳と3歳では蹴る力に差が出てしまう。
5歳のキック力は、普通のサッカーボールを凶器に変えるくらいの力を持っているし、3歳の子供が普通のサッカーボールを蹴ると、ボールが硬いせいで思いっきり蹴ることが出来ない。さらには足を痛めてしまう恐れもある。

その点では、このソフトサッカーボールはポリウレタンで出来ているため柔らかく、足を痛める心配がない。さらにはちょうど良いくらいの重さがあるため、5歳の子が蹴っても部屋の上の方へ飛んでいくこともない。

部屋の中でサッカーをしたいという場合は重宝するアイテムである。

「す~ぱ〜、みらくるしゅーと!」

トモの必殺技シュートを止められないフリをするのも、育メンパパの役割なのである。



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