育メンパパの秘密道具

入学前の子供と一緒に遊べる秘密の遊び道具を、小説形式で紹介します

【第8話】タンクつき水鉄砲

真夏の太陽がギラギラと暴れている昼下り。部屋の中はエアコンで冷えた空気が流れており、快適な空間を醸し出している。天国とはまさにこの事である、などとソファに座りながら感じているそばでは、子供たちがゲームをして遊んでいる。

 

3歳になるとゲームを覚える、ということを長男のハルから学んだ。何故ならトモが3歳になってしばらくした頃にゲームを始めたからだ。それはスマホのゲームアプリであったり、どこかの大手ゲーム会社が出しているゲーム機だったりする。

 

こんなに幼い頃からゲームをさせて良いものかどうかは賛否両論あるが、子供が興味を持ったものはひとまず触らせて見るのが我が家の方針である。飽きるまでさせてやるのだ。

 

テレビの電源をつけて、何か気になる番組が無いかを確認してみる。特にないので、見ることができていない録画したドラマでも見ようかとリモコン操作をしていると、ハルがパパの暇人ぶりを検知したのか、急にゲームの電源を切って、

 

「パパ、遊ぼ!」

 

誘ってくるのである。パパは天国でゆったりとしたいのだぞ。外は暑いから今日は部屋の中で遊ぼうか、と提案したが、どうしても外に行きたいとワガママを言い始めた。それを見ていたトモもいつの間にかゲームを止めて片付けまでやろうとしている。

 

「早く外に行こーよー!」

 

諦めず灼熱地獄にパパを誘うハル。地獄に身を投じるなど言語道断、天国の快適さを知ってしまったパパはソファと一体化する。ごろんと寝そべり、

 

「ハル、外は暑いから熱中症になる。お部屋の中で遊びなさい」

 

と尤もらしいことを言って誤魔化した。

しかし我が子に理屈は通らないらしい。昨日もお部屋でしか遊んでない、パパこの前一緒に遊ぶ約束したでしょう、遊んだらお勉強するから、と言った反論がマシンガンのように放たれる。

2つ目については約束した記憶がないが、このままゴロゴロしている親の姿を見せるのも子供の教育には良くない。仕方なく身を起こしたものの、この日差しの中で外で遊べば、本当に熱中症になりかねない。洗濯物も1時間かからずに乾いてしまうほどの暑さなのである。

 

「そうか、濡れてもすぐに乾くのか」

 

おもむろにソファから立ち上がり、倉庫のカギをもって玄関へと向かう。ハルとトモは突然動き出したパパに戸惑うが、外に出ることがわかるとすぐについてきた。

玄関の扉をあけると、サウナに入るときのような熱波が襲ってきた。負けじと外へと歩みだし、倉庫に鍵を差し込んでドアを開ける。4畳半ほどの大き目な倉庫の左手前には、夏に遊ぶための様々な道具が置いてある。

「ハル、トモ、スプラトゥーンごっこするか」

そういうと、ハルの目が大きく開かれ

「やる! スプラトゥーンごっこ!」

と言ってガッツポーズを作っていた。あとからひょこひょこついてきたトモも、ハルどうしたの? と聞いていたあと、ハルから内容を聞くと「やった!」と言って、どこで覚えてきたのか喜びを表す謎の踊りをし始めた。

 

一つ補足が必要であろう。「スプラトゥーン」とは、任天堂が出しているゲームの名前である。ハルとトモが3歳のころから始めているゲームであり、人生最初にハマったゲームなのだ。

Splatoon 2​​楽天ブックス

 

ちなみにパパの人生最初のゲームは「スーパーマリオブラザーズ」である。任天堂が長き間に渡ってゲーム業界で不動の地位を得ているのは感服させられる。

 

そのスプラトゥーンというゲームは、手持ちの武器を使ってなるべく多くの壁や地面を塗っていく、いわばペンキ塗りの陣取りゲームである。また武器を使って敵チームのメンバーを倒すこともできる。

武器にはローラー(部屋の床を掃除するコロコロのようなもの)やゴルゴ13のようなスナイパー銃、大きな筆のようなものなど様々あるのだが、今回やるのは何のことはない。水鉄砲を使って、相手に水をかけるというものだ。

 

しかし、ここで使うのはただの水鉄砲ではない。水をためることができるタンクを背中に背負って、タンクにつながったホースの先には威力抜群のウォーターガン。飛距離はおよそ15メートルというなかなか高性能の銃である。

それでいて1000円を切る価格なのだから、お得な買い物なのである。

 


水鉄砲 水ピストル ウォーターガン ネオタンクスプラッシャー 飛距離8m タンク容量約1.3L 池田工業社​​トイスタジアム2号店

 

まずは子供たちを濡れてもいいようにシャツ一枚、ズボンは短パン、裸足にサンダルという格好にさせる。そのあと、水を水道から補充し、いざ対決である。

ハルとトモが同じチーム、パパは一人チームだ。ちなみにパパの武器は筒を押し込むタイプのしょぼいものである。飛距離が5メートル程度しか飛ばず、水も一回押し込んだらすぐに補充する必要がある。

 


イメージ

火縄銃に竹やりで応戦しているようなものだが、大人の力をなめられては困る。敵の銃口をかいくぐり、接近戦へともつれ込めばこちらにも勝機はあるのだ。

各々の水の補充が終わり、いざ決戦!

 

ハルが遠距離から発射してくるがパパには届かない。その間、パパはじわじわと距離を詰めていく。すると、ハルの後ろからトモが飛び出してきた。パパの右方向から狙った射撃を間一髪よけるが、そのすきにハルの射程圏内に入っていた。

ハルの一撃がパパのTシャツに見事ヒット! たまらずパパは一時退却するために距離をとった。兄弟で連携プレイを見せるとは、我が子ながらなかなかの戦略家である。

 

こうなったら一人ずつ確実に仕留めていこう。パパはトモに向かって突進していった。トモは喜びながら逃げていく。しかし、トモを狙ったのはわざとであり、ハルを油断させるための作戦なのである。ハルが追いかけてきたところを見計らって、トモに向けていた銃口をハルに向ける。ハルは驚いた顔を見せるが、もう遅い。

 

パパの渾身の一撃がハルのシャツにヒットした。「やられたー!」と言いながらも、パパを追って反撃してくる。すべての水を吐き出したパパは丸腰状態で、もはや射撃の的である。近距離からのハルの攻撃を体中に浴びてびしょぬれとなってしまった。

その後、水を補充したパパは、今度はトモに水をかけたのだが、水をかけられたトモは服がベタベタしているのが不快だったらしく、「やめて~」と言って泣き出してしまったのであった。。。