育メンパパの秘密道具

入学前の子供と一緒に遊べる秘密の遊び道具を、小説形式で紹介します

【第8話】タンクつき水鉄砲

真夏の太陽がギラギラと暴れている昼下り。部屋の中はエアコンで冷えた空気が流れており、快適な空間を醸し出している。天国とはまさにこの事である、などとソファに座りながら感じているそばでは、子供たちがゲームをして遊んでいる。

 

3歳になるとゲームを覚える、ということを長男のハルから学んだ。何故ならトモが3歳になってしばらくした頃にゲームを始めたからだ。それはスマホのゲームアプリであったり、どこかの大手ゲーム会社が出しているゲーム機だったりする。

 

こんなに幼い頃からゲームをさせて良いものかどうかは賛否両論あるが、子供が興味を持ったものはひとまず触らせて見るのが我が家の方針である。飽きるまでさせてやるのだ。

 

テレビの電源をつけて、何か気になる番組が無いかを確認してみる。特にないので、見ることができていない録画したドラマでも見ようかとリモコン操作をしていると、ハルがパパの暇人ぶりを検知したのか、急にゲームの電源を切って、

 

「パパ、遊ぼ!」

 

誘ってくるのである。パパは天国でゆったりとしたいのだぞ。外は暑いから今日は部屋の中で遊ぼうか、と提案したが、どうしても外に行きたいとワガママを言い始めた。それを見ていたトモもいつの間にかゲームを止めて片付けまでやろうとしている。

 

「早く外に行こーよー!」

 

諦めず灼熱地獄にパパを誘うハル。地獄に身を投じるなど言語道断、天国の快適さを知ってしまったパパはソファと一体化する。ごろんと寝そべり、

 

「ハル、外は暑いから熱中症になる。お部屋の中で遊びなさい」

 

と尤もらしいことを言って誤魔化した。

しかし我が子に理屈は通らないらしい。昨日もお部屋でしか遊んでない、パパこの前一緒に遊ぶ約束したでしょう、遊んだらお勉強するから、と言った反論がマシンガンのように放たれる。

2つ目については約束した記憶がないが、このままゴロゴロしている親の姿を見せるのも子供の教育には良くない。仕方なく身を起こしたものの、この日差しの中で外で遊べば、本当に熱中症になりかねない。洗濯物も1時間かからずに乾いてしまうほどの暑さなのである。

 

「そうか、濡れてもすぐに乾くのか」

 

おもむろにソファから立ち上がり、倉庫のカギをもって玄関へと向かう。ハルとトモは突然動き出したパパに戸惑うが、外に出ることがわかるとすぐについてきた。

玄関の扉をあけると、サウナに入るときのような熱波が襲ってきた。負けじと外へと歩みだし、倉庫に鍵を差し込んでドアを開ける。4畳半ほどの大き目な倉庫の左手前には、夏に遊ぶための様々な道具が置いてある。

「ハル、トモ、スプラトゥーンごっこするか」

そういうと、ハルの目が大きく開かれ

「やる! スプラトゥーンごっこ!」

と言ってガッツポーズを作っていた。あとからひょこひょこついてきたトモも、ハルどうしたの? と聞いていたあと、ハルから内容を聞くと「やった!」と言って、どこで覚えてきたのか喜びを表す謎の踊りをし始めた。

 

一つ補足が必要であろう。「スプラトゥーン」とは、任天堂が出しているゲームの名前である。ハルとトモが3歳のころから始めているゲームであり、人生最初にハマったゲームなのだ。

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ちなみにパパの人生最初のゲームは「スーパーマリオブラザーズ」である。任天堂が長き間に渡ってゲーム業界で不動の地位を得ているのは感服させられる。

 

そのスプラトゥーンというゲームは、手持ちの武器を使ってなるべく多くの壁や地面を塗っていく、いわばペンキ塗りの陣取りゲームである。また武器を使って敵チームのメンバーを倒すこともできる。

武器にはローラー(部屋の床を掃除するコロコロのようなもの)やゴルゴ13のようなスナイパー銃、大きな筆のようなものなど様々あるのだが、今回やるのは何のことはない。水鉄砲を使って、相手に水をかけるというものだ。

 

しかし、ここで使うのはただの水鉄砲ではない。水をためることができるタンクを背中に背負って、タンクにつながったホースの先には威力抜群のウォーターガン。飛距離はおよそ15メートルというなかなか高性能の銃である。

それでいて1000円を切る価格なのだから、お得な買い物なのである。

 


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まずは子供たちを濡れてもいいようにシャツ一枚、ズボンは短パン、裸足にサンダルという格好にさせる。そのあと、水を水道から補充し、いざ対決である。

ハルとトモが同じチーム、パパは一人チームだ。ちなみにパパの武器は筒を押し込むタイプのしょぼいものである。飛距離が5メートル程度しか飛ばず、水も一回押し込んだらすぐに補充する必要がある。

 


イメージ

火縄銃に竹やりで応戦しているようなものだが、大人の力をなめられては困る。敵の銃口をかいくぐり、接近戦へともつれ込めばこちらにも勝機はあるのだ。

各々の水の補充が終わり、いざ決戦!

 

ハルが遠距離から発射してくるがパパには届かない。その間、パパはじわじわと距離を詰めていく。すると、ハルの後ろからトモが飛び出してきた。パパの右方向から狙った射撃を間一髪よけるが、そのすきにハルの射程圏内に入っていた。

ハルの一撃がパパのTシャツに見事ヒット! たまらずパパは一時退却するために距離をとった。兄弟で連携プレイを見せるとは、我が子ながらなかなかの戦略家である。

 

こうなったら一人ずつ確実に仕留めていこう。パパはトモに向かって突進していった。トモは喜びながら逃げていく。しかし、トモを狙ったのはわざとであり、ハルを油断させるための作戦なのである。ハルが追いかけてきたところを見計らって、トモに向けていた銃口をハルに向ける。ハルは驚いた顔を見せるが、もう遅い。

 

パパの渾身の一撃がハルのシャツにヒットした。「やられたー!」と言いながらも、パパを追って反撃してくる。すべての水を吐き出したパパは丸腰状態で、もはや射撃の的である。近距離からのハルの攻撃を体中に浴びてびしょぬれとなってしまった。

その後、水を補充したパパは、今度はトモに水をかけたのだが、水をかけられたトモは服がベタベタしているのが不快だったらしく、「やめて~」と言って泣き出してしまったのであった。。。

 

【番外編】運動会

過ごしやすい天気である。
気温は20度、偶に雲間から日差しが差し込むものの、曇り空が日光を遮り、心地よい風が吹いてくる。

小学校のグラウンドには、幼稚園に通園する幼児とその両親、祖父母が集まっていた。休日に賑わいを見せる本日は、幼稚園の運動会なのである。
ハルとトモをそれぞれのクラスメイトの元へ連れていった。同じようにその場に子供を預けていった親たちは、颯爽とその場を離れカメラのポジションを奪いに駆け出していく。子供の運動会が始まる前に、すでに親たちの陣取りゲームが始まっているのである。

半分くらいは不要だと思われる開会式を終えたあと、まずは年少組によるかけっこである。
いきなりトモの出番だ。
開会式の時、トモを遠くから見ていたのだが、どこかフラフラとしていて、タコのようであった。体を左右に揺らしたり、下を向いて俯向いたまま、手をだらっと下げて脱力したりと、奇怪な動きを繰り返していた。親の感であるが、あれはきっと緊張をしているために、気を紛らわせようとしていたのだろう。
パパは心の中でトモを応援した。そして、あとでクネクネをしないように注意しておこうとも思った。

出走の順番になったトモがスタートラインに並んだ。横一列に他の組の園児が3人、スタートの合図を待っている。
程なくしてピストルが鳴った。
一斉に駆け出す3人に混ざって懸命に駆け出すトモ。肘は不自然に真っすぐで、膝があまりまがっていない。如何にも運動オンチを臭わせる、アスリートの走りには程遠いフォームだ。

しかし、真剣な表情で走る姿は、パパの心に熱いものを湧き立たせた。家では甘えたりフザケたり、ハルのマネをしたりと、真面目な姿を見たことがなかった。遊びで走ったとしても、すぐに「疲れたー」と言って歩いてしまう根性なし。
そんなともを見ていると、全く成長していないと思ってしまっていたのだが、実はこんなにも一生懸命走れるようになっていたのだ。

ゴールテープを切ったとき、ぎりぎりで一人を抜かして2位となった。しかし、順位に関わらず最後まで懸命に走りきった姿は、パパの涙腺を刺激するには十分であった。
パパは隠れながら頬を流れる雫を拭い、ゴールしたトモの勇姿を心の中で祝ってあげた。

続いて年中組のかけっこが始まり、その次にかけっこを控えた年長組が入場門へと集まってきた。その中に隣の友達とふざけあっているハルがいた。年長ともなると場馴れしているためか、緊張感が全く感じられない。
しかし親にとってはそうもいかない。ハルはまさかの最終走者なのである。

ここで少し補足が必要であるが、年少、年中組は背の低い順に走るのに対して、年長組は足の遅い順に走るというルールになっている。つまり、一番最後を走るハルはクラスの中で一番早いということになる。

運動音痴の両親から足の早い子供が生まれる理屈が全くわからないが、折角なので行けるところまで行って欲しいという欲が生まれてくる。
幼稚園で一番早い子供が我が子なのだ、という自慢ができるのである。いや、決して自慢がしたいわけではない。ただ、自分の子がどのくらい早く走れるのか、可能性を信じたくなったのだ。

子供への期待と不安を行き来しながら妄想していると、あっ言う間にハルの出番となった。

異なる組の3人がスタートラインに立った。最後は人数の関係か、4組あるうちの3組だけが走ることになったようだ。

ピストルの音を待つ。『ヨーイ――』と声がかかった瞬間、皆が走り出した。慌てて先生たちがハルたちを止めにかかる。スタートの合図は鳴っていない。フライングである。

それが原因なのかはわからない。
その後に再度スタートラインに立ち、ピストルの合図で走り出したハルは、どこか気の抜けた走りに見えた。
結果は3位。親としては残念な結果であったが、走り終わった本人は、友達と再びふざけ合うのだった。親の期待は泡となって曇り空へと消えていった。

しかし、ここで終わりではない。運動会の最後の演目、年長組によるクラス対抗リレー。最後を彩る、盛り上がりが最高潮となる種目である。ハルはなんとリレーのアンカーでもあったのである。我が子がリレーのアンカーを務めるとは、世の中、何が起こるかわからないものである。

ママとともにカメラポジションを確保するため移動し、幼稚園最後の力走を写真に収める準備をする。最後に勇姿を見せてほしい、と願う中、リレーが始まった。

ハルのクラスはいつも練習では2位となるらしい。出だしも2位をキープしていたが、途中で1位に浮上した。このまま1位か、と思ったが2位との距離はみるみる縮まっていく。アンカーのハルにバトンが渡る一周前には、ついに抜かれてしまった。

次はハルの番である。丸い輪っかのバトンがハルに手渡された。1位の組との距離はわずか数メートル。運が良ければ抜かせるか。バトンを持ったハルの表情は、かけっこで走ったときと違って真剣そのものであった。フォームもしっかりとしていて、本当に頑張って走っていることがわかった。そのまま行けば抜かせるか、そう思った瞬間――。

ハルの体が不意に前のめりとなる。一瞬体が浮き、そのまま膝と腕から地面にダイブした。ハルの体は地面に倒れた。観客からはどよめきが起こったが、すぐに声援へと形を変えた。その声に混じって声の限りハルを応援した。ハルはすぐに立ち上がり、何とか2位をキープしたままゴールすることが出来た。

その後、3位と4位のクラスがゴールし、リレーが終わった。走り終えた園児が座って整列している中、我が子の意外な姿を見た。
体育座りで一番後ろに座るハル。そのハルが、声を上げて泣いていたのである。まわりを気にすることなく、口を大きく上げて泣き叫んでいる。

この運動会が始まる一週間前、ハルが言った言葉を思い出した。

「オレ1位になりたいから、パパいっしょにはしる練習しようよ」
「いや、ハル、来週運動会なんだから、今週は少しカラダを休ませておきな」
「えー、オレ1位になってみんなにすごいねって言われたいんだ。あと、パパとママが喜ぶからがんばりたいんだ」

ハルは、1位になりたかったのだ。ゴール前で転んでしまい、悔しさがこみ上げてきたのだろう。悔しくて悔しくてたまらなかったのだ。
ハルの姿を見て、本日二度目の目から汗、である。うちの子供たちはどうしてこうも親の水分を奪っていくのか。

しかし、ハルはカッコよく走った。褒めてやろうと思った。

閉会式が終わり、ハルとトモは先生から頑張ったご褒美のメダルをもらった。
ハルとトモ、ママとパパの4人で歩いて帰る道の途中、パパはハルに尋ねてみた。

「ハル、リレー終わったあと、どうして泣いていたの?」
一位になれなくて悔しかった、という答えが返ってくるのだろうとわかっていながらも子供の口から言わせたい、嫌らしい親なのである。
しかし、ハルからは違った答えが返ってきた。

「転んで痛かったの」

ん、あれ? 1位取れなかったからではなくて? 何回かハルに確認するも、悔しくて泣いたわけではなかったようだ。親の感動を返してくれ。


そしてその日の夜。

「トモが一生懸命走る姿に感動してちょっと泣いちゃったよ」
パパは片手にビールを持ちながらママに打ち明けた。
するとママは意外、という表情を見せたあと、
「あんな変な走り方見たら笑っちゃうでしょう」
と、パパとは全く違う感想が返ってきた。

どうも、感動するタイミングを間違ったのか。何とも言えない気持ちになった運動会なのであった。

【第7話】室内鉄棒

子供の頃、逆上がりができるクラスメートを羨ましく思った記憶がある。若干の負けず嫌いだった自分は、何とかしてできるように近くの公園で父親と練習したものである。

鉄棒を使うには公園に行かなくてはいけない、という時代は遙か昔の話。今はホビーショップやネット通販などで室内用の鉄棒が購入できる時代になった。値段も比較的安めで、1万円もかからずに自宅に鉄棒を設置できるのだ。

 

 我が家には子供部屋と呼ばれる、子供のおもちゃが散乱している部屋が存在する。ゆくゆくは勉強机やベッドなどが置かれる場所になるであろう部屋は、現在カラーボールや、おままごと道具、100円ショップで買ったピストル、フィギュアなどで埋め尽くされている。片付けを子供らに命じたところで、一週間も経てば足のふみ場がなくなるおもちゃ部屋に戻ってしまう、まさに玩具のラビリンスである。

 

そんなおもちゃだらけのスペースで、ひときわ存在感を出しているのが鉄棒である。鉄棒の下にはマットを敷いており、着地で足を怪我しないように配慮してある。もちろん、親がいないときは鉄棒で遊んではいけないと口酸っぱく伝えてある。

 

とある休日の昼下り。運動が大好きなハルと、何でもハルの真似をしたがるトモに連れられ、パパは子供部屋にやってきた。何やら部屋の中を見せたいらしい。

ドアを開けて部屋に入ると、目の前にはガラクタ……、いやおもちゃの大群が待ち構えて――、いなかった。

カラーボールは専用のボックスに仕舞われ、フィギュアは所定の位置へ、おもちゃのピストルなども収納箱に収まっており、床が見えていて広く感じる。

 

「二人でお片付けしたのか?」

と聞くと、パパの驚き顔に満足そうなハルが抱きついてきた。

「うん! パパと遊ぶ約束したからトモちゃんと一緒にお片付けした!」

トモはパパの手を引いて「早く遊ぼうー」と急かしてくる。

 

そう言えば――。

早朝のベッドで寝ぼけているときに、寝ているパパ上に乗って「遊ぼう、遊ぼう」と繰り返すハルとトモに、遊ぶ条件として『子供部屋のお片付け』を突き出したのを思い出した。

子供というのは、大人がその場しのぎで言った約束というものをはっきりと覚えているものである。子供には申し訳ないが、パパの頭からはすっかり消えていたが、約束した以上、付き合わねばなるまい。リビングでゆっくりと読書に勤しむ予定を変えて、小一時間ほど子供たちと遊ぶことにした。

 

せっかく広くなった部屋である。普段は出来ないことをさせたいと考えていたところ、ハルが何気なく鉄棒にぶら下がっているのを見て思った。ハルに逆上がりを覚えさせよう。

「ハル、逆上がりって知ってるか?」

「出来るよ、逆上がり!」

「えっ?」

ハルは手を逆手にして鉄棒を握りしめた。そして、地面を思い切り蹴って体を浮かせると、足は鉄棒の高さを超え、そのまま体ごと鉄棒の上部に乗り上げた。あとは腕の力と反動で鉄棒から降りるだけである。

もう出来るのか? パパは小学校に入ってしばらくしてから出来たような気がするが、今の子は幼稚園で出来てしまうのか。おそるべし現代の教育、恐るべしヨコミネ式体操教育。

試しにトモにもさせてみるが、予想通り鉄棒を掴んで体を浮かす程度が精一杯である。うん、パパの遺伝子はトモの方に偏ったんだな、と変な安心感を得る。

 

鉄棒の高さはある程度調節することができる。さきほどハルが逆上がりを決めたときの鉄棒の高さは、ハルの目線ほどの高さである。もう少しあげてみたらどうなのだろうかと考え、ハルの頭の高さよりも少し上の位置に鉄棒を調節した。

「ハル、もう一回やってみて」

いいよー、と言って逆上がりをくるりと決めてみせる。

ほほう、なかなかやるな。となると限界がどこまでなのか気になってしまうのが親の性である。鉄棒の位置を再び調整し、ハルの腕がなんとか届く位置に高さを上げた。

ちなみに鉄棒の高さ調整は両端の調節ねじを回し、一旦緩めたあとに鉄棒の高さを手動で調節するのだが、右と左にねじがついているため、それぞれの高さに気をつけねば、鉄棒が斜めに傾いてしまったりする。 

また、ねじの締め方が甘いと、ぶら下がったときの重みで鉄棒がガクンと落ちたりするため、ねじはしっかりと締める必要がある。

 

結局、ハルは最後に設定した高さで逆上がりを決めることは出来なかった。ハルが逆上がりをする間、トモは暇そうにしていたので、最後は下に敷いていたマットを鉄棒に引っかけて、屋根のようにしておうちを作り、おままごとをしてあげた。トモは喜んでおままごと道具を引っ張り出してくる。

 

こうやって再びおもちゃだらけの部屋へと様変わりしていくのである。

 


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【第6話】体操マット

『小さい頃から体操をさせると運動能力が上がるらしい』

 

本当かどうかわからないが、『ヨコミネ式体操』と呼ばれる方式を幼稚園で導入しているところがあるくらいなので、あながち嘘ではないのかもしれない。

幼稚園だけではなく家でも体操出来るようにさせてあげたい、という思いから、我が家でもカラーマットを購入してみた。

 

しかし、この購入があの事件を引き起こすことになろうとは、その時は知る由もなかったのである……。

 

家にはマットが2つ並んで置いてある。5歳の兄であるハルと3歳の弟トモ、それぞれ一つずつ、祖母からプレゼントされたものだ。

華麗に前まわりを見せるハル。いつの間に出来るようになったのか、子供の成長は凄まじい。

それに続いてトモも何とか前まわりをしてみせるが、横に転がってしまう。手伝おうとすると、「ボクがやるの!」と怒られてしまった。そのくせ、自分が出来ないと思ったことは手伝わないとすぐに泣いてしまう。3歳というのは難しい年頃である。

 

前まわりを得意げに見せるハルに対して

「それじゃあ、後ろまわりをやってみなよ?」

と挑戦的な質問をしてみたところ、ハルは簡単だよと言わんばかりに、スタート地点へ向かった。

ハルはマットに背中を向けて体を丸くし、後ろにゴロンと転がったが、頭がつっかえて横へと倒れてしまった。

 

さて、ここでパパが大人の実力を見せつけることができれば、子どもたちの信頼と憧れを獲得できるのだ。『お~、パパすげぇ!』とキラキラした目でパパを敬うがいい。

尊敬されるシーンを一度想像してから、「お手本を見せてあげよう」と言って子どもたちをマットの外へ追いやった。

 

スタート位置で膝を曲げて腰を落とし、腕を小さく畳んで、手のひらが後ろに向くように肘を前に出す。いわゆるカエルポーズである。あとは重力に身を任せて、後ろにごろんと転がるだけである。

自信満々で挑んだ久しぶりの後ろ回りは、体が固まった三十路の男性には突然出来る技ではなかったようだ。まっすぐ回ることができず、マットの外側へ横向きに倒れてしまった。

「勢いが足りなかったんだナ!」

少しムキになって、再びスタート位置へ戻り、カエルポーズをとった。勢いをつけて背中をマットにつけて足で床を思いっきり蹴った。背中から頭の順にマットが触れ、後頭部が触れるのと同時に手の反動で身を起こすように回る。

勢いよく回ったおかげで横に反れなかったが、どうやら着地の仕方を忘れていたようだ。足から床に着地すべきところを、うっかり膝から床についてしまったのだ。

マットの上であれば問題はなかっただろう。しかし、カラーマットというのは大人が体操を行うためには少々小さい道具であった。着地するための膝は、カラーマットからはみ出し、あろうことか部屋と部屋を仕切るドアのスライド部に強打してしまった。

 

「っ~~~~~!」

 

言葉にならない言葉を漏らし、膝を抱え込んだ。ドアのスライド部は若干、段差のようになっており、角が出ているのだが、その突起部分に思い切り膝をぶつけてしまったのだ。

発泡スチロールに膝蹴りするつもりが、間違ってコンクリートにやってしまった、そんなレベルの痛みである(やったことがないが、きっとそうなのだ)。

おそるおそる膝の具合を見てみると、案の定、大きな青いアザが膝に広がっていた。膝に久々、鮮やかなアザ。 歩くと激痛という程では無いが、痛みが襲ってくる。これは翌日の通勤時に影響が出そうである。

 

ソファの上で冷凍庫から持ってきたアイスノンで膝を冷やしながら、しばらくは子供の体操を静観する。子供から尊敬の眼差しを受ける予定が、失望と心配の眼差しを受ける結果となってしまった休日であった。

 

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【第5話】トランポリン

子供にとって、トランポリンは大人と同じ視点での景色を見せてくれる。

普段は飛ぶ事が出来ない高さまで、自らの力で飛ぶことができる魔法の道具である。

たまにパパも運動のために利用するのだが、すぐに子供が寄ってきて一緒に飛ぼうとするので、まともに飛んだことがない。

 

今日も朝ご飯を食べたばかりだと言うのに、我が家の暴れん坊ラビット『ハル』と、ハルの行動を何でも真似する『トモ』が代わるがわるトランポリンで跳ねている。食後からずっと飛び続けているので、胃の中の食べ物が逆流してこないか、パパは心配である。

 

一通り飛びんで満足したのか、ハルがソファで寛いでテレビを見ているパパに向かって走ってきた。

「パパ! 手をつないで!」

と言って手を引っ張ってくる。おいおい、パパは食後をゆったりと過ごしたいぞ、と多少の抵抗を見せたが、いつの間にかトモも寄ってきて、もう一方の手を掴み、兄弟でパパの両手を引っ張ってきた。仕事戦士の休息時間に、安息の地から引きはがそうとするのだからいい度胸である。

 

とは言え、かわいい我が子の頼みを親の怠惰で断るのも可愛そうなので、仕方なく重い腰をあげると、無邪気な我が子に手を引かれてトランポリンまで連れていかれた。

ちなみにハルが言った『手をつないで!』とは、単純に手をつなぐと言うことでは無い。トランポリンで跳ねる子供の手をつなぎ、ジャンプするタイミングで少し上に持ち上げる遊びのことを指している。

パパに引っ張られタイミング良く持ち上げられると、トランポリンの反動を利用して、より一層高く飛べるようになるのである。ただし思いきり持ち上げると、飛んでいる本人が思ったよりも高く飛べてしまうので、へっぴり腰でジャンプするトモなんかは、怖がってすぐに止めてしまうことをパパは知っている。

 

まずはハルと両手をつなぎ、ジャンプする度にカウントをとる。

「いち、にー、の――」

ハルに体を持っていかれないように足で踏ん張りながら、腕にぐっと力を込めて大きく上にあげる。

「さーん!」

ハルの体はパパの肩の高さを超え、視線はパパの頭を超えるほど宙に浮いた。

いち、にー、のー、さーん!」

いち、にー、のー、さーん!」

いち、にー、のー、さーん!」

10回ほど繰り返すと、トモが待ちきれなくなって「もうおしまい!」と騒ぎ始めた。パパも何気に疲れてくるので小休憩である。

トモに交代して、両手をつないだ。小さなジャンプを2、3回始めたので、タイミングを合わせて、

いち、にー、のー、さーん!」

の合図で高く上げてやると、やはり怖かったのか、「ジャンプおしまい!」と言って、トランポリンを駆け回り始めた。

それを見たのかハルは「ジャンプしないなら、交代して!」とイライラをむき出しにすると、トモは「イヤだイヤだ!」と言って泣いてしまった。3歳児のトモは最近、やりたい事に口を出されるとすぐに泣く癖が付いている。

 

仕方なくトモを食事の後片付けが終わったママに預け、ハルの鬱憤を解消させるためのゲームを提案してやった。

題してトランポリン高跳びゲーム。これには着地でケガをしないように敷いておく柔らかいマットと、飛び越える壁のようなものを用意する必要がある。我が家はこれを2つのカラーマットで実現する。

 

まずは一つのカラーマットをトランポリンを囲むように立てて、次に着地するであろうところにもカラーマットを敷く。これだけで完成である。壁の代わりに高さを固定した紐のようなもので、飛び越える線を張ってもよいだろう。

中々の壁の高さである。高さは1メートルくらいであろう。そこをトランポリンのバネを利用して、思い切って飛ぶのである。

ハルは高揚した表情でトランポリンにあがると、大きく縦に飛び始めた。3,4回跳ねてから思い切って前に飛ぶも、カラーマットの壁に思い切り当たってしまった。しかしマットなのでぶつかっても怪我はないし、壁といってもマットを立てているだけなのですぐに倒れる安全設計である。

 

飛ぶときに足を曲げるように指示して、パパが一度見本を見せる。

「スーパーウルトラじゃーーーーんぷ!」

かっこいい名前を言いながら華麗な跳躍を見せつけたつもりが、着地で尻餅をつくという残念な結果となる。


それを見て、ハルが再度チャレンジすると、見事壁を超えることができたのであった。運動神経皆無の両親から、なぜこんな活発な子供が生まれたのか、未だにわからない謎なのであった。

 


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【第4話】ホワイトボード

昨日の晴天が嘘のようだ。朝起きた時には轟音をたてて凄まじい量の滴が天空から降り注いでいた。

ベッドから体を起こさず、両脇で寝てている長男『ハル』と、次男『トモ』の寝顔が可愛かったため、ご褒美として頭を撫でてやった。普段は我が儘で騒がしい兄弟も、寝ているときは天使なのである。

 

「今日はDVD鑑賞とゲームで一日が終わりそうだな」

ぼそっと独り言を漏らした。基本的に休みの日は、子供たちに好きなことをやらせている。しかしながら、そろそろ息子たちにちゃんと勉強して欲しいと思っていた。ひらがな、カタカナ、足し算、引き算、アルファベットの読み書きをする学習ノートは何冊か購入しているものの、ハル、トモのどちらも自ら進んで勉強をするような子供ではない。

親がそもそも勉強を習慣的に行うように育てていないためであり、ガリ勉に育てるつもりもないため、然程気にはしていなかったのだが、そうはいっても小学校に入学した後、多少困らない程度には知識を持っておいて欲しいものである。

 

よし、今日はなるべく楽しく勉強させて、少し勉強することに興味を持ってもらおう。そんなことを思ってベッドから体を起こした。

 

とは思ったものの……。

 

朝ご飯を食べ終わり、テーブルに向かって計算ドリルを解く二人の兄弟は明らかに不満そうな顔で鉛筆を握っている。結局、どのように教えたら勉強に前向きとなってくれるのかわからず、おやつをあげるという人参をぶら下げる方法を取ったのである。

ページをめくる度に「わかんない~、パパ教えて~」と全く集中力のない声で助けを求めてくる二人。心の中で溜め息をつきながら、星や丸を書いて説明してやるが、ドリルの空欄スペースが狭くて上手く書くことが出来ない。

 

これは早速『アレ』の出番か、とリビングの壁に設置されているものを確認した。

「ハル、ちょっとコッチおいで」

と言って連れてきたのは、先週買ったばかりの『壁掛け用ホワイトボード』の前である。黒色のペンのキャップを外し、絵を描き始める。

「でぶっちょのパパが70キロから60キロに痩せました。さて、何キロ減ったでしょうか?」

そう言って、ホワイトボードに下手くそなデベソの男性の絵を描いた。「だれ、これ~」とハルが絵を指さして笑っている。その後にお腹が細くなった男性を再び描き、絵の下にそれぞれ70キロ、60キロと書いて見せた。

 

さらにその下に『70ー□=60』という計算式を書いて、

「この四角に入る数字がお菓子を我慢して、お腹のぶよぶよが無くなった数字だよ」

と適当な説明をする。

ハルはしばらく考える素振りを見せたが、やがて「あ、わかった! 10だ!」と斬新なアイディアが閃いた如くの表情で、四角の中に『10』と書き込んだ。

「正解!」

と言ってホワイトボードに大きな花丸を書いてやると、ハルは笑顔の花を咲かせてテーブルに戻っていった。

 

先ほどまでの不満げな表情が無くなり、ホワイトボードの有効性に多少の手応えを感じた。続いてはトモである。

トモはまだひらがなを半分程度しか覚えていない。しかし、ひらがなの文字を一つ一つ教えても、もう一度聴くと「んー、わかんない!」と言って全く覚えてくれない。きっと興味がわかないので覚える気が無いのだろう。

記憶を定着する方法として、繰り返し記憶する、という手段のほかに、感情や感覚を利用した記憶法を使う、という手段がある。におい付き消しゴムを嗅ぎながら単語を暗記したり、思いっきり泣いたり怒ったりしたときの記憶は、普通に記憶するよりも忘れにくいと言われている。

 

よって、トモには楽しく覚えてもらうために、絵を描いてしりとりをしながらひらがなを覚える、という遊び感覚で勉強させることにした。

『りんご』の絵を描いて、

「『ご』から始まる言葉の絵を描いてください」

と言って続く言葉の絵を描くところに矢印を描いた。トモはしばらく考えた後に、ホワイトボードに5,6個の点々を描いた。「これは何?」と聞くと、「ごま!」と大きな声で返してくる。 絵心が全くいらない、なんと楽ちんな絵なのだろうかと、感心してしまった。

パパは『点々』の隣に矢印を描き、マスクの絵を描いた。しかし、トモは何の絵だかわからずに困惑した表情を見せている。

パパの絵は控えめに言っても下手くそである。絵の才能は子供に遺伝してほしくないと願っていたが、幼稚園で描いてくる絵を見た感じではバッチリ受け継いでる。

 

ホワイトボードに描かれている怪奇な絵に興味を持ったハルが「オレもやる~」と言って、しりとりに参加してきた。マスクの隣にアンパンマンのような顔を描くと、「これな~んだ!」と嬉しげに聞いてくる。おそらく『クマ』なのだろうが、耳がないのでクマに見えない。

 

子供の時は下手くそでもいいのである。どんどん絵や文字を書いて貰いたい。 持って生まれた才能は諦めても、本人が努力をする機会を親が奪ってはならない。常にチャレンジ出来る機会を与えてあげるのが親の役目である。

 

この後、色んな色のペンが欲しいという要望を受け、100円ショップで複数のカラーペンを購入した。カラフルな絵を描いて、新たな才能が開花することを願うばかりである。

 

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【第3話】スーパーワブルボール

コバルトブルーの大空に飛行機雲が細長く伸びている。公園の木々は青々と生い茂り、夏の訪れを感じさせる初夏のひととき。

我が家のパワフル長男『ハル』と、抱っこしてほしいために赤ちゃんのモノマネをし始めた次男『トモ』と一緒に公園に来ていた。

 

家の近くにある小さな公園である。住宅街の一角にあり、少し入り組んだ道の先にあることから、利用する者は近所の住人だけである。そのためあまり混んでいない穴場スポットなのだ。

遊具は滑り台と鉄棒しかないが、最近作られた新しい公園である。子供を見守る親のために用意されたのか、ベンチも2つほど設置されている。

 

アクティブ少年のハルは、鉄棒で逆上がりをしている。5歳なのによくやれるなと、自分の子供ながら感心してしまう。自分が逆上がり出来たのはおそらく小学生になってからだろう。 

それに対して3歳のトモは鉄棒にぶら下がるのみである。「パパー! ボクも逆上がりしたい!」と言ってきたのでサポートしてあげたが、鉄棒がお腹に食い込むのが嫌だったのか一回で止めてしまった。

「パパー、なんかして遊ぼう!」

ハルが若干汗ばんだ顔で駆け寄ってくる。なんかして遊ぶ、という曖昧な要求に対する回答を考えてみたが、パッと思いつくものがない。「鬼ごっこするか?」と提案するも、「えー、違う遊びがいい!」と我儘を返される。

 

面倒くさいなぁ、という気持ちは口に出さず代替案を検討するも、隠れんぼやサッカーなど普段やっている遊びは、提案したとしても却下されるのがオチである。助けを乞う思いで公園を何となく見渡した。

すると公園脇の家からシャボン玉が飛んでいる事に気づいた。なるほどシャボン玉か。ネットで購入した『特殊なシャボン玉』を開封せず、押し入れに入れたままであることを思い出した。

 

「ちょっと待ってろ」と言って二人を公園に残し、片道数分の道のりを駆け足で移動した。押し入れから箱に入った『特殊なシャボン玉』を取り出すと、急いで開封する。

中には萎んだ状態のシャボン玉と、空気を入れる電動ポンプが同封されていた。シャボン玉と言ってもゴムのような素材で出来た割れないシャボン玉である。シャボン玉のように薄い膜で出来たボールが作れるキットなのだ。

 

ポンプにはシャボン玉へ差し込むための刺し口がついており、クリームのようなものを塗り込んでシャボン玉の奥まで刺し口が届くようにすること、と注意書きが添えられていた。

子供用の保湿クリームを刺し口に塗りつけポンプのスイッチを入れると、電動ノコギリのような騒音をたててポンプが起動した。そのままシャボン玉の穴が空いた部ず部分に差し込んでやる。けたたましい音とは裏腹に、全くシャボン玉が膨らまない。

1分ほど試行錯誤してみたところ、どうやら奥の奥まで刺し口を入れ込まないと空気が上手く入らないことがわかった。グリグリと奥まで差し込んでやると、徐々にシャボン玉が膨らんでくる。そのまましばらく放置をして、50センチを超える巨大なボールを作り上げた。

 

公園へ持っていくと、シャボン玉を見たハルとトモが勢いよく駆け寄ってきた。ハルは「でっか!」と言ってシャボン玉を抱え込み、トモは指でツンツンとつついたり、叩いたりして触り心地を楽しんでいる。

非常に弾力があり、転がすとボヨンボヨンという音をたてながら滑稽な動きを見せる。空に放てば、ブヨブヨと空中で形を変えながらゆっくりと地面へ落下してくる。

気づけは近所の子どもたちと輪になってシャボン玉を投げあう遊びを始めていた。皆、不思議なシャボン玉の動きや大きさに魅了されているようだ。

 

しかしこのシャボン玉、一つ欠点がある。

素材のせいなのか、砂や土がよくくっつくのだ。大きさは手を広げるくらいあるためどうしても抱え込んでしまうが、その時にシャボン玉についた砂が洋服に付いてしまうのである。

 

帰宅したときには、親子の服は砂だらけなのであった。

 


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