育メンパパの秘密道具

入学前の子供と一緒に遊べる秘密の遊び道具を、小説形式で紹介します

【第6話】体操マット

『小さい頃から体操をさせると運動能力が上がるらしい』

 

本当かどうかわからないが、『ヨコミネ式体操』と呼ばれる方式を幼稚園で導入しているところがあるくらいなので、あながち嘘ではないのかもしれない。

幼稚園だけではなく家でも体操出来るようにさせてあげたい、という思いから、我が家でもカラーマットを購入してみた。

 

しかし、この購入があの事件を引き起こすことになろうとは、その時は知る由もなかったのである……。

 

家にはマットが2つ並んで置いてある。5歳の兄であるハルと3歳の弟トモ、それぞれ一つずつ、祖母からプレゼントされたものだ。

華麗に前まわりを見せるハル。いつの間に出来るようになったのか、子供の成長は凄まじい。

それに続いてトモも何とか前まわりをしてみせるが、横に転がってしまう。手伝おうとすると、「ボクがやるの!」と怒られてしまった。そのくせ、自分が出来ないと思ったことは手伝わないとすぐに泣いてしまう。3歳というのは難しい年頃である。

 

前まわりを得意げに見せるハルに対して

「それじゃあ、後ろまわりをやってみなよ?」

と挑戦的な質問をしてみたところ、ハルは簡単だよと言わんばかりに、スタート地点へ向かった。

ハルはマットに背中を向けて体を丸くし、後ろにゴロンと転がったが、頭がつっかえて横へと倒れてしまった。

 

さて、ここでパパが大人の実力を見せつけることができれば、子どもたちの信頼と憧れを獲得できるのだ。『お~、パパすげぇ!』とキラキラした目でパパを敬うがいい。

尊敬されるシーンを一度想像してから、「お手本を見せてあげよう」と言って子どもたちをマットの外へ追いやった。

 

スタート位置で膝を曲げて腰を落とし、腕を小さく畳んで、手のひらが後ろに向くように肘を前に出す。いわゆるカエルポーズである。あとは重力に身を任せて、後ろにごろんと転がるだけである。

自信満々で挑んだ久しぶりの後ろ回りは、体が固まった三十路の男性には突然出来る技ではなかったようだ。まっすぐ回ることができず、マットの外側へ横向きに倒れてしまった。

「勢いが足りなかったんだナ!」

少しムキになって、再びスタート位置へ戻り、カエルポーズをとった。勢いをつけて背中をマットにつけて足で床を思いっきり蹴った。背中から頭の順にマットが触れ、後頭部が触れるのと同時に手の反動で身を起こすように回る。

勢いよく回ったおかげで横に反れなかったが、どうやら着地の仕方を忘れていたようだ。足から床に着地すべきところを、うっかり膝から床についてしまったのだ。

マットの上であれば問題はなかっただろう。しかし、カラーマットというのは大人が体操を行うためには少々小さい道具であった。着地するための膝は、カラーマットからはみ出し、あろうことか部屋と部屋を仕切るドアのスライド部に強打してしまった。

 

「っ~~~~~!」

 

言葉にならない言葉を漏らし、膝を抱え込んだ。ドアのスライド部は若干、段差のようになっており、角が出ているのだが、その突起部分に思い切り膝をぶつけてしまったのだ。

発泡スチロールに膝蹴りするつもりが、間違ってコンクリートにやってしまった、そんなレベルの痛みである(やったことがないが、きっとそうなのだ)。

おそるおそる膝の具合を見てみると、案の定、大きな青いアザが膝に広がっていた。膝に久々、鮮やかなアザ。 歩くと激痛という程では無いが、痛みが襲ってくる。これは翌日の通勤時に影響が出そうである。

 

ソファの上で冷凍庫から持ってきたアイスノンで膝を冷やしながら、しばらくは子供の体操を静観する。子供から尊敬の眼差しを受ける予定が、失望と心配の眼差しを受ける結果となってしまった休日であった。

 

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