育メンパパの秘密道具

入学前の子供と一緒に遊べる秘密の遊び道具を、小説形式で紹介します

【第4話】ホワイトボード

昨日の晴天が嘘のようだ。朝起きた時には轟音をたてて凄まじい量の滴が天空から降り注いでいた。

ベッドから体を起こさず、両脇で寝てている長男『ハル』と、次男『トモ』の寝顔が可愛かったため、ご褒美として頭を撫でてやった。普段は我が儘で騒がしい兄弟も、寝ているときは天使なのである。

 

「今日はDVD鑑賞とゲームで一日が終わりそうだな」

ぼそっと独り言を漏らした。基本的に休みの日は、子供たちに好きなことをやらせている。しかしながら、そろそろ息子たちにちゃんと勉強して欲しいと思っていた。ひらがな、カタカナ、足し算、引き算、アルファベットの読み書きをする学習ノートは何冊か購入しているものの、ハル、トモのどちらも自ら進んで勉強をするような子供ではない。

親がそもそも勉強を習慣的に行うように育てていないためであり、ガリ勉に育てるつもりもないため、然程気にはしていなかったのだが、そうはいっても小学校に入学した後、多少困らない程度には知識を持っておいて欲しいものである。

 

よし、今日はなるべく楽しく勉強させて、少し勉強することに興味を持ってもらおう。そんなことを思ってベッドから体を起こした。

 

とは思ったものの……。

 

朝ご飯を食べ終わり、テーブルに向かって計算ドリルを解く二人の兄弟は明らかに不満そうな顔で鉛筆を握っている。結局、どのように教えたら勉強に前向きとなってくれるのかわからず、おやつをあげるという人参をぶら下げる方法を取ったのである。

ページをめくる度に「わかんない~、パパ教えて~」と全く集中力のない声で助けを求めてくる二人。心の中で溜め息をつきながら、星や丸を書いて説明してやるが、ドリルの空欄スペースが狭くて上手く書くことが出来ない。

 

これは早速『アレ』の出番か、とリビングの壁に設置されているものを確認した。

「ハル、ちょっとコッチおいで」

と言って連れてきたのは、先週買ったばかりの『壁掛け用ホワイトボード』の前である。黒色のペンのキャップを外し、絵を描き始める。

「でぶっちょのパパが70キロから60キロに痩せました。さて、何キロ減ったでしょうか?」

そう言って、ホワイトボードに下手くそなデベソの男性の絵を描いた。「だれ、これ~」とハルが絵を指さして笑っている。その後にお腹が細くなった男性を再び描き、絵の下にそれぞれ70キロ、60キロと書いて見せた。

 

さらにその下に『70ー□=60』という計算式を書いて、

「この四角に入る数字がお菓子を我慢して、お腹のぶよぶよが無くなった数字だよ」

と適当な説明をする。

ハルはしばらく考える素振りを見せたが、やがて「あ、わかった! 10だ!」と斬新なアイディアが閃いた如くの表情で、四角の中に『10』と書き込んだ。

「正解!」

と言ってホワイトボードに大きな花丸を書いてやると、ハルは笑顔の花を咲かせてテーブルに戻っていった。

 

先ほどまでの不満げな表情が無くなり、ホワイトボードの有効性に多少の手応えを感じた。続いてはトモである。

トモはまだひらがなを半分程度しか覚えていない。しかし、ひらがなの文字を一つ一つ教えても、もう一度聴くと「んー、わかんない!」と言って全く覚えてくれない。きっと興味がわかないので覚える気が無いのだろう。

記憶を定着する方法として、繰り返し記憶する、という手段のほかに、感情や感覚を利用した記憶法を使う、という手段がある。におい付き消しゴムを嗅ぎながら単語を暗記したり、思いっきり泣いたり怒ったりしたときの記憶は、普通に記憶するよりも忘れにくいと言われている。

 

よって、トモには楽しく覚えてもらうために、絵を描いてしりとりをしながらひらがなを覚える、という遊び感覚で勉強させることにした。

『りんご』の絵を描いて、

「『ご』から始まる言葉の絵を描いてください」

と言って続く言葉の絵を描くところに矢印を描いた。トモはしばらく考えた後に、ホワイトボードに5,6個の点々を描いた。「これは何?」と聞くと、「ごま!」と大きな声で返してくる。 絵心が全くいらない、なんと楽ちんな絵なのだろうかと、感心してしまった。

パパは『点々』の隣に矢印を描き、マスクの絵を描いた。しかし、トモは何の絵だかわからずに困惑した表情を見せている。

パパの絵は控えめに言っても下手くそである。絵の才能は子供に遺伝してほしくないと願っていたが、幼稚園で描いてくる絵を見た感じではバッチリ受け継いでる。

 

ホワイトボードに描かれている怪奇な絵に興味を持ったハルが「オレもやる~」と言って、しりとりに参加してきた。マスクの隣にアンパンマンのような顔を描くと、「これな~んだ!」と嬉しげに聞いてくる。おそらく『クマ』なのだろうが、耳がないのでクマに見えない。

 

子供の時は下手くそでもいいのである。どんどん絵や文字を書いて貰いたい。 持って生まれた才能は諦めても、本人が努力をする機会を親が奪ってはならない。常にチャレンジ出来る機会を与えてあげるのが親の役目である。

 

この後、色んな色のペンが欲しいという要望を受け、100円ショップで複数のカラーペンを購入した。カラフルな絵を描いて、新たな才能が開花することを願うばかりである。

 

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